私は、加害者更正教育プログラムに通う夫のパートナーです。

私がDVに遭っていると気付いたのは、自殺する前に、誰かと話しをしたくてかけた、一本の電話からでした。
電話の方は、私の話をすべて聞いて下さった後、「それはDVですよ。あなたは悪くない。死んではだめ。まず、DVについて知りましょう」と優しく強く語り掛けて下さいました。
私は、夫に殴られたわけでも蹴られたわけでもありません。ですから、DVと言われてもまさか・・・と思いました。しかし、DVの本を購入し読み進むにつれて、背筋が凍りました。あまりにも私達夫婦の関係に当てはまったからです。

私は、夫の優しい笑顔に惹かれ一緒になることを決めました。周囲も、夫の人柄の良さを褒めちぎりました。
結婚してすぐ、意見の対立が生じた時、夫は泣きました。小さい子供のようにうずくまり、泣きじゃくりました。私は優しい彼を困らせてしまったと慌てて謝り、もう少し言い方に気をつけよう、優しい彼を傷つけないようにしなくてはと自分自身を戒めました。
それからも夫は、私と意見が相違する度に、泣きじゃくり続けました。
次に、暗い目をして私を無視することが加わりました。物を投げたり蹴ったり、大声で喚き散らすことが加わり、指を指して罵倒されました。
私が言い返したりすると、彼は震えて泣きじゃくり「苦しい・・・息ができない・・!とのたうち回りました。救急車を呼ぼうと思ったくらいの苦しみ様でした。彼の体をさすりながら、私が言い返したりやり返したりするとこんなに彼を追い詰めてしまうのだと思いました。
そうして過ごすうちに、私の精神状態がおかしくなってきました。涙が止まらなくなり、夫が大きな音を出すだけで震え、腰が抜けるようになりました。精神科へ連れて行ってもらい、薬を処方してもらいました。
精神科に通院しても、薬を飲んでも、私の症状は改善されませんでした。同じく、夫の癇癪も止まりませんでした。私は自分が病気で、夫に十分なことをしてあ げられないせいだとますます自分を責めるようになりました。周囲にも、「病気に甘えていないで強くなりなさい」と諭されました。
気付いたらカミソリを持って部屋を歩き回っていました。あの時、カミソリを放り投げ、受話器を握ったのは、奇跡だったと・・・感謝せずにはいられません。

DVと知ってからも、苦悩は続きました。本に「DVは薬やカウセリングでは治りません」と書いてあったにも関わらず、私は何かせずにはいられませんでした。
DVの本を夫にも渡しました。主治医に相談して、夫に薬を処方してもらいました。夫婦カウセリングも受けました。周囲にもDVだと告白しました。
夫は「俺を犯罪者にするの?」とひどく傷つき、しばらく口をきかなくなりました。周囲からは、「殴られたわけでもないのに何がDVだ。動じずに強くなればいいだけだ」と激励されました。励ましさえも辛く、再び、私の精神世界は暗闇に閉ざされようとしました。
それでも、私の言葉に耳を傾けてくれた方々がいました。その方々のおかげで、もう一度勇気を振り絞り、生きようと決意しました。

その時です。偶然に、ネットで「DV防止教育センター」を知りました。
縋る思いで、メールしました。
返事は、きました。
力強い励ましと心震える労りの言葉が、返ってきました。
さんざん遠回りして遠回りして、ようやく私は見つけたのです。
夫の行くべき場所を。
そして、これからの人生を生き直すための、彼自身のための講師を。
そして、私の命を救って下さった方との、尊い出会いを。

こうして、現在、夫は加害者更正教育プログラムを受講しています。
夫は、ようやく変わり始めようとしたところです。
私 も、夫=DV加害者は、相手の心情を理解する・・・つまり、相手を思いやることが本当は苦手だ、と知りました。それなのに、周囲に良く思われたくて自分自 身を精一杯飾り立てようとするから、ますます辛くなり、さらにそんな自分に幻滅して自信を持てなくなり、しまいには理想の自分と本当の自分のギャップに耐 え切れずパニックになるのだなと思いました。
自分を見つめ直し、等身大の自分を愛せればよいのに、自分は理想の自分しか認めたくないからそうできず、その葛藤に巻き込まれていくのが、パートナーなのだな・・・と理解してきたところです。
等身大の夫を私は愛しているのに、夫はそんな自分自身を愛せないで苦しんでいるのですから、夫も辛いのだと思います。しかし、私は見守るしかできません。あなたが変わらなきゃ、愛していてもあなたから離れるよ、と、涙を浮かべても厳しく見届けていくしかありません。

DVの痛ましい報道がある度に、加害者更正教育プログラムの必要性を痛感します。
プログラムを受講される方は、パートナーと離れていても、ご自分の未来のために、プログラムを諦めずに受けて欲しいと思います。
ご家族が共にいて下さる方は、そのことを奇跡と思い、大事に噛み締めて最後までやり通して欲しいと願います。

そして、私のように、ひっそりと自分を精神的に殺すことを選択せずにはいられない方も、耐え切れず命を消そうとしてしまっている方も、どうか諦めずに・・・もう一度生きて下さい。あなた自身の人生を取り戻して下さい。
この世界は時に狭く暗い穴の中に入り込んでいるように見えても、思いがけず広く明るい世界があり、あなたを救おうと光を照らし続けてくれている居場所が必ずあります。どうか諦めず、探して下さい。

参加者のパートナーの方から感想をいただきました